various

恋は切なしバイトせよ乙女 第二夜「出会いはコンビニにある」

LINEで送る

ライター・編集者として活躍する傍ら、妄想ツイートでTwitterを日々賑わせているカツセマサヒコさん。待望の第二夜!カフェでの出会いに引き続き、今回はコンビニでの出会いを華麗に妄想してくれました。ぱっとしないと思われがちのコンビニバイトが一瞬でときめきメモリアルになる瞬間をどうぞお楽しみください。

LINEで送る

30年も生きていると、一年一年がとても短く感じられる。

「あれ、2カ月前にお節料理食べたばっかりじゃなかったっけ?」てな具合に、時間はあっという間に過ぎていく。

昔は夏休みが異常に長く感じられたし、20分休みで校庭に出てドッジボールをする元気があった。けど、今じゃ20分なんて、トイレに行ってツイッターを見たら終わりである。

これって、寂しいけれども、極めて普通な感覚らしい。

1歳の子どもにとっての1年は、365日/365日。
2歳の子どもにとっての1年は、365日/730日。
5歳の子どもにとっての1年は、365日/1825日。

当然ながら、歳を重ねるごとに、「1年の重さ」は軽くなっていくのである。

要するに、人生にも体感速度があって、それは年々早く感じられるようになるわけだ。これを統計化したものを「ジャネーの法則」と呼ぶのだが、5歳にとっての1年は、50歳にとっての10日程度に感じるらしい。そして、ジャネーの法則上での「人生の折り返し地点」は、20歳かそこらで来るのだとか。

いやいや。20歳って。大学生の大半が、もう折り返し地点を過ぎてるやん。

そんなわけで、乙女諸君、貴方たちには時間がない。人生の半分が、今にも終わろうとしている。そんな状況でなぜ貴方たちは、うかうかとスマホを見ていられるのだろうか。
恋をしたいなら、そのための出会いがほしいなら、書を捨て、街へ出よ。そしてバイトでもしてみないか乙女。バイトにこそ、出会いがあると思わないか乙女。

今回は、乙女な貴方がバイトしたくなるように、コンビニバイトでの出会いを考えてみた。



出会いはコンビニにある

「コンビニバイトは、ダサい」
そう決めつけてはいないだろうか。

なんとも言えないセンスの制服を着て、機械の如くお釣りを取り出し、そっとお客の手のひらに乗せる。身に付くスキルは、「レジ袋に商品を詰める際の収納技術」くらいかもしれない。

それらは確かに、地味だ。
でも、世の中には、地味バイトが突如として輝く瞬間がある。

たとえば、金髪が良く似合う・色白・長身・マフラー男子が、週に2~3回、必ず夜22時前後に、肉まんかあんまんを買って帰るコンビニだったら、どうだろうか。

あなたは急にテンションとメイクが、フルパワーモードになってしまうのではないだろうか。制服も、信じられないくらいキレイにアイロンがかかってしまうのではないだろうか。

通常なら、いくら乙女な貴方でも、22時前後になるとヘトヘトである。早く次のシフトに交代したいと思うばかりで、目は完全に死んでいる。息絶えてしまっている。

しかしそこで、金髪が良く似合う・色白・長身・マフラー男子が現れる。柔軟剤の匂いをほのかに香らせて、マフラーイケメンが、貴方のいるレジ前を颯爽と通る。ああ、罪。なんて罪なかほり。

マフラーイケメンは必ず店内奥のドリンクコーナーに直行して、「ボトラッテ」とかそういう「ちょっと女子力もありそうな飲み物」を買い物かごに入れては、そのまま店内をグルっとまわって、雑誌コーナーに行く。

マフラーイケメンは色白・長身イケメンなので、水着グラビアが表紙の雑誌は絶対に手に取らない。センスのいいファッション誌か、文芸誌を数分立ち読みする程度である。選ぶ雑誌の種類にまで、あざとさの神様が舞い降りている(この時点で貴方の耳には何故か第九が聞こえてきている)。

貴方の働くコンビニは、立ち読み禁止だ。あまりに彼が長居するようなら、注意しなければいけない。でも、貴方は、彼を注意することはできない。何故なら、金髪が良く似合うイケメンが文芸誌を読んでいるその横顔は、壁画? ゴシック建築? 太陽の塔? アートはよくわからないけれどなんだかそれっぽい神々しい感じになってしまっているのである。もうやめて。その横顔で、こっちを見ないで(見てない)。

そんな金髪イケメンが、結局ボトラッテだけを入れたカゴを持って、あなたのいるレジ前に立つ。カウンター越しの距離、秒速5センチメートル。

貴方は、胸が高鳴る。

(今日は、ボトラッテだけ? それとも、肉まん……? あんまん……? その薄いくちびるで、この寒空の下、はふはふしながら肉まんを食べ歩きするっていうの……? 何よ、その罪な描写。やめて。これ以上、私のゲスの極みを乙女にしないで)

金髪マフラーイケメンは、マフラーで口元を隠しながら、小さな声で言う。

「あと……アメリカンドッグください……」


か わ い い !!!!


貴方は思わず満面の笑みで、子犬をなだめるかのような声で、「かしこまりました」と言って、金髪イケメンが少し恥ずかしそうな顔をしているのを横目で見つめながら、アメリカンをドッグする。子犬。まさに彼は子犬の擬人化そのものなのである。

貴方は「私もご一緒しますか?」と内面で叫びつつ、現実では「袋は別々にしますか?」と確認したのち、アメリカンドッグを彼に手渡す。イケメンは「ありがとうございます」と目を細めていい、貴方は(こちらこそすぎる)と思いながら、顔を赤らめる。


ここまでだ。今回も、ここまでいい。

その後ふたりが、どういう展開になるかはわからない。クリスマスを前にして、ふたりきりになる華麗なるチャンスを手にするかもしれない。突然「何時まで、働いていますか?」と聞いてきて、バイト終わりの時間まで外で待っていてくれるかもしれない。


乙女諸君。出会いは、コンビニにある。


「元カレが妹と付き合い始めて……」とか「好きになった人が親友の彼氏で……」とか、そういうフクザツな恋に疲れてしまったのなら、新たな出会いの場でも探してみたらどうだろうか。過去の想いを引きずったままでもいい。そのままでもいいから、何かひとつ新しいことを始めてみると、未来は見えてくるかもしれない。

人生は、短いのだから。


コンビニ@下北沢の求人一覧
コンビニ@新宿の求人一覧

カツセマサヒコ

下北沢のライター・編集者。書く・話す・企画することを中心に活動中。
趣味はツイッターとスマホの充電。
Twitter:@katsuse_m

ユー&ヨーコのつぶやき

私はよく、「私がその店のアイドル☆」妄想するよ!あの人もあの人もあの常連さんもユーに会いに来てるのね~みたいな!

ユー&ヨーコ

誰もが愛する美少女設定ね…ユーらしいわ。

LINEで送る