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たしかに出会いはカフェにあるかもしれない/さえりさん

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妄想ツイートで名を馳せるライターのさえりさんが、yuune女子待望の妄想記事をリリース!カツセマサヒコさんの人気連載「恋は切なしバイトせよ乙女」に、物申したいとのこと。胸キュン必至!

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カツセマサヒコという男がいる。このyuuneで「恋は切なしバイトせよ乙女」という頭の悪い面白い連載を書いていて、ひたすら「バイト先での運命の出会い」について妄想を続けている男である。彼の名誉のために言うが、彼は普段は真面目にライター・編集者をしている。様子がおかしいのは基本的にこのサイトでの連載だけである(たぶん)。

彼の連載記事はいずれもだいぶヤバイのだけれど、連載一発目にあたる出会いはカフェにあるは特にヤバイ。何がヤバイって、これが3万PVを超えているということがヤバイ。3万PVということは、少なくとも3万回はこのページが世の中にコンニチハしたということだ。そしてきっと「きゃ、素敵!」とか「こんなの理想すぎ!」とか「そんな日はいつ来るのかなぁ」なんて思った女子たちがたくさんいるはずなのだ。

恐れずに言えば、ぶっちゃけこんな起こりもしない妄想に、「きゃー、いいなぁ」などと思うのはじつに不毛である。カフェバイトで、180センチくらいのイケてるメンズのこの世のものとは思えない前髪を前にショートキャラメルマキアートがグランデサイズしてしまう状況を想像するよりも、今月の電気代が先月よりいくら安く済んだかを計算して、次スーパーに行ったら奮発していちご買っちゃうゾッ練乳もつけちゃおっかなぁ〜などと妄想した方がいくらか役に立ちそうである。

もちろん、わたしもカツセマサヒコの連載を読みながら思っていた。うん、まぁ、たしかに出会いはカフェにあるかもしれない、カツセさすが! いいね、カフェバイト最高!不毛こそ我が人生! って。

運命の出会いがあるとしたら、こんなふうだろう。


そもそもカフェで働く男性は控えめに言っても最高だ。清潔感があるし、サービス精神旺盛な人も多い。白いシャツにエプロンをつけていれば“かっこよさ増し増しの法則”により、どんな男性でも6億倍格好良く見える。「おれ綾野剛に似てるって言われるんだよね」っていうぶっ飛ばしたくなるような男性も、カフェバイトしてれば「たしかに〜」と笑ってあげられるかもしれないっていうくらいには増し増しの法則がかかる。

もしかしてここで運命の出会いがあるかも?

……そう期待してアルバイトをはじめたのに、世の中そう上手くはいかない。たしかに格好いい先輩はいたけれど、もう2年付き合っている彼女がいて未だラブラブだし(携帯の待ち受け画面が彼女だった)、店長はイケメンだけど既婚子持ちでさすがに恋愛する気にならない(バイト中は指輪を外しているけれど薬指の日焼けを見るだけで思いとどまることができる)。

爽やかな人は確かに多いから目には優しいけど、「運命の出会い」はここではなかった、か。

そう肩を落としながらも、訪れる春の陽気に心が躍り、その日は髪の毛を巻いてからポニーテールを結う。ふわふわポニーテール。うん、春っぽくていいかも。

出がけに母親に「あら、今日はおしゃれしてるのね。バイトの後でかけるの?」と声をかけられた。

別に何にもないけど。バイト行って帰るだけだけど。でもいつかのためにいつだって可愛くいるのは女の子の使命でしょ? なーんて、髪巻いたのなんてはじめてだけど。と、陽気な脳内と軽い足取りでバイトに向かい、何事もなく1日の仕事を終える。

裏口を開けてゴミ捨てをして、「んー」と背伸びをしていると、裏口ががちゃんと開き、同期の男が顔をひょこっと出した。

「ゴミ出しさんきゅっ」と言いながら近づいてきた彼からは、ふわっと深い匂いが香る。この匂い、好きなんだよな。ダークでビターでディープな、コーヒーの匂い。

そして唐突に彼はこう言う。

「なんか今日、かわいいよね? 髪型ちがう?」

え……? なんのこと……って、あっ、そっか、わたし今日髪の毛巻いたんだった。え、気づいたの? 髪を切っても気づかない男という生き物がわたしが髪を巻いたという些細な違いに気づいたの?

「あ、うん。ちょっと巻いてみた」
「やっぱり? いいじゃん。ちょうかわいい」

髪の毛を触ろうとして手を伸ばしてきたその指が、細くてすらっとしたものだということに初めて気づいて、ちょっと体がこわばる。え、ただの、同期だよね? ちょっと待って、メガネかけてる人ってタイプじゃないからあまりよく観察したことなかったけど、まつげ長い……。それに、なんかさっきから、ダークでビターでディープな匂いが……。

「おしゃれするなんて。なに、恋でもしてる?」

にかっと笑うその顔に、視線がロックオン。え、てか、この音なに? え? わたしの鼓動? なんでこんなにうるさいの?

てか、こいつ、こんなに背高かったっけ? そんなに前髪重めだったっけ? その間から覗く眼ってそんなに涼しげだったっけ? ていうか八重歯かわいすぎない? ていうかさっきからコーヒーの匂いだとおもってたけど、あんたの匂いじゃないのこれ、

なにそれ。いい匂いすぎない!? 

「恋なんかしてない、よ?」

自分の鼓動に向けるように小さく答えると彼がこう笑う。

「あ、よかった。聞いたくせになんだけど、彼氏いるとか言われたら、俺へこんでたかも」

ハハッと笑って体を揺らした瞬間もう一度香る匂い。

この匂い、この男の人の匂い、多分首筋からする匂い、ちょっとその首筋に近づいていいですか、近づきたいんですけど、もう止められないんですけど、

あ、やだ、わかった、わたしわかっちゃったわかっちゃった、ちょっと世界、聞いてください、わたしの運命の人ここにいました。

わたしの心に咲いたチェリーブロッサムフラペチーノ、グランデサイズ、いや、フォーエバーラブロマンスサイズ甘い展開多めの人生オールわたし、新作です試飲いかがですかーーー。

……以上。

カフェバイトが本当に関係していたのかちょっと怪しいけれど、バイト先での運命の出会いはきっとある。それはお客さんとの出会いかもしれないし、先輩との恋かもしれないし、後輩男子との恋かもしれない。はたまた「あまり意識していなかった一番そばにいる人」との恋かもしれない。

最後にココ・シャネルの名言を引用して終わりたい。

その日、ひょっとしたら、
運命の人と出会えるかもしれないじゃない。
その運命のためにも、
できるだけかわいくあるべきだわ。
ココ・シャネル

バイトをしている人たち、気を抜くなよ。
明日には運命の出会いが待っているかもしれないから。

カツセマサヒコ、わたしも思うぞ。たしかに出会いはカフェにあるかもしれないってね。

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この記事のライター

書籍・Webでの編集経験を経て、現在フリーライターとして活動中。人の心の動きを描きだすことと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。好きなものは、雨とやわらかい言葉とあたたかな紅茶。
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ユー&ヨーコのつぶやき

フォーエバーラブロマンスサイズってどのくらい大きいんだろう〜〜

ユー&ヨーコ

(いやそこ真剣に考えるところじゃないから……)

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